忍者ブログ

Eternita

日々の愚痴・妄想小話駄々漏れの場所。 内容はさしてないです....

2024/11    10≪ 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  ≫12
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

名探偵コナン

平次×和葉。
大学生になって離れてしまった二人、という設定。
尻切れトンボなので続きます、たぶん。


幼い頃、私達はいつも一緒だった。
大人になって、約束が必要になって、私達は居場所をなくした。


もうずいぶん前から凝視しているケータイから、和葉はようやく視線を移した。

かけようか、どうしようか。
悩むのはほぼ最近の日課になっていて、それでも今まで一度もかけたことはない。
もしかしたら、という馬鹿な思いに囚われていた結果がこれ。

「はぁー……」

情けな。
心の中で呟いてみても、過去の臆病な自分は戻ってこない。
いや、今でも十分臆病なんやけども。
なにせ、18年間いっしょやった幼なじみに忘れ去られてるかも、なんて心配をしてるんやから。

冷静な自分はちゃんと分かってる。
平次は記憶力いいし、探偵という職業柄、大阪府警に勤めてる父と顔を合わせる機会もたまにある、らしい。
けれど、感情は簡単に納得してくれない。
そして、あたしはいっつも肥大すぎた不安に流されてしまう。

簡単に言えば、この3年間一度も平次と顔を合わせてない、という事実に。


「うーんっ」

ぱちん、とケータイを開きっぱなしだったケータイの画面を閉じると、テーブルに放り出し、勢いをつけてベッドに倒れ込んだ。
明日は大学の定期テスト最終日だ。
普段からこつこつ勉強しているので、テストだからといって特別詰め込むようなこともない。
というか、今はする気にもなれない。

自分から行動を起こせない、いつも平次の一挙一同に翻弄される。
そんな悔しい状況を変えたかったけど、そのために大学入学と同時に実家を出る平次に会わせて、私も一人暮らしを始めたけど……、結局幼馴染み脱却は失敗したのかもしれない。

私達の関係は、今考えればとても奇妙なものだった。
家族のようで、けど異性という事実により発生する壁がなれなれしい関係を否定する。
友達のようで、お互いに干渉しすぎることが仇になる。
恋人には、もしかしたら周りからはそう見えたかもしれないけど、決してなり得なかった。

まさにどっちつかず。
家族でも友達でも、恋人でもない。
説明するなら、相手のことを知りすぎて遠慮を忘れた親友、みたいな感じだろう、たぶん。

そして今は、本当に誰でもない、ただの他人になってしまった。


「アホみたいやわ」

ぽつりと呟く。
最近独り言が多い気がする。

「はぁ」

今夜2回目のため息だ。
思わず口から漏れるため息やぼやきが、さらに惨めな気分にさせる。

寝よ、そうだ寝てしまおう。
どうせ明日は3限目だけだ、勉強は明日起きてからしてもいいだろう。
寝仕度をすませてタオルケットに潜り込む。
悩んでいたことが丸ごと嘘のように、眠りに落ちた。


夢を見てる。
夢の中でそう認識した。

私がどんな格好してるのかはわからへんけど、周りのみんなは全員高校の制服を着ている。
人の輪の中心にいる、平次以外の全員だ。
色黒幼馴染みは、なぜか気に入りの帽子を被り、黒のスーツ姿という珍妙な出で立ちだった。
この前見た雑誌の写真が元ネタっぽい。

平次は周りの高校生、私らの同級生達とじゃれ合い笑っていた。
服さえ変えれば、高校時代の様子と変わらない。
平次もみんなも楽しそうだった。
あたしだけが、そこから遠い。
一人だけ、輪っかから外れた場所にいる、誰も気づく人はいない。

それがなんか無性に悲しくて、声をかけようと一歩踏み出した時、平次がふとポケットからケータイを取り出した。
短く何か話しているけど、あたしには聞こえない。
平次は、また唐突に電話を切ると、くるりと周りに断りも入れず、輪から離れ、そして開いていた扉をさらに大きく開き、そこから出ていった。


ぱちり、と現実に戻される。
ここまで、目覚めが悪い夢はほんとに久しぶりだ。
夢やなんて絶対に見ない、って思ってたのに。

「なんで……っ」

なんで今さら、こんな夢見るんやろ。
諦めきれへんのは嫌と言うほど分かってるけど、けどここまで激しいとは思わなかった。
今になって、どっと後悔が押し寄せる。

なんで、なんでなんでっ!!

平次が実家を出る時、卒業式、大学合格発表、入試日、お正月、クリスマス。
思いを伝える時間はいくらでもあったはずやのに。
離れる前も、離れてからも、会おうと思えばいつでも会えたのに。
気まずくなる前に、電話番号が変わってるかも、なんて心配せんでええ時期に、なんで挨拶がららでも連絡入れんかったんやろ。

朝から、しかも寝起きから、涙がぼろぼろ零れてくる。
止めようとは、不思議と思わなかった。
絶対後で後悔するって、腫れぼったい目で大学行って恥ずかしい思いするって、冷静な自分が口酸っぱくして言ってて、それでも手で拭うこともしない。

「平次」

この3年間、毎日呼び続けて、けど一度も本人に届くことはなかった。
きっと夢の中でも届かんかった、と思う。

夢の平次は大人になっていた。
そして、当たり前のように平次の横にあたしはいなかった。
高校時代、平次の横にあったあたしのスペースはきれいさっぱり無くなっていて、誰もそのことを疑問に思わない。

いつかくると思っていた時間は、夢の中で最初に現実になった。

PR
この記事にコメントする
              
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
カラー
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
非公開 管理人のみ閲覧できます
パスワード   
* コメントの編集にはパスワードが必要です
この記事にトラックバックする
トラックバックURL:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
プロフィール
HN:
蔡岐 悠
性別:
女性
趣味:
読書・妄想・睡眠
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
<< Back  | HOME |   Next >>
Copyright ©  -- Eternita --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Material by もずねこ
忍者ブログ  / Powered by [PR]