Eternita
日々の愚痴・妄想小話駄々漏れの場所。 内容はさしてないです....
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BASARA
幸村+佐助(♀?)、現代。
本当はホワイトデーに出そうと思っていたもんです、ケーキネタ。
気がついたら、こんなに過ぎてっ・・・!!
春の訪れを告げる、赤くあまずっぱい果実
大きいもの、小さいもの、真っ赤なもの、まだ青みがかったもの
それは、さながら人のように・・・
「佐助ぇー、まだかっ?」
まただ。
もう、何度目だと思ってるのか。
そわそわと周りを動き回る青年を佐助は、きっと睨みつけた。
「まだ、って何回言ったらわかんの!?まだまだですっ!!」
「うっ・・・す、すまぬ。」
己の非を素直に詫びるのは良い事だが、この場合どうなんだろう・・
そんな事を考えながら、佐助はボールのクリームを泡立てる。
佐助の青筋を見たのか、幸村はそれ以上進行状況を聞いたりはしなかった。
「旦那っ、オーブン開けて。」
「わかった!」
最初のやりとりから約20分。
ピピピッという小気味よい電子音の後、
ようやく佐助から任された仕事に、幸村は張り切った。
「火傷しないように気を付けてねっ」
「・・うむ!」
実際のところ、火気に強い幸村にその手の心配はほとんど無用なのだが、
この場合、せっかく焼いたスポンジの巻き添えという最悪の結果が延長上に浮かぶので、佐助は取り敢えず注意を促した。
「・・うん、まあまあかな。」
取り出されたスポンジを見て、佐助はわずかに顔を綻ばせた。
キッチンにほのかに甘い匂いが漂う。
デコレーションはまだだけれども、今日はシフォンケーキなので後は気楽なものだ。
逆さにして冷ましている間、残りの洗い物を全てすませてしまう。
・・・・しっかし、ほんとに良かったの?
ここ使わせてもらっちゃってさあー
今回は、佐助のうちではなく真田家。
しかも幸村で使っている離れの方ではなく母屋の大きなダイニングキッチンを使用している。
というより、幸村が
「是非とも、イチゴづくしのケーキ三昧をしてみたいのだっ!!
今がちょうど店頭にも出回っているし、学業も暇であろう!?
・・何より、お館様も久方ぶりに佐助の手料理を食べたいと言われているっ!!」
と、強引に材料も何もかも(費用は信玄持ちだ)そろえて、
佐助を真田家に連行してきたのが発端だ。
だから、不満はあれ、申し訳なさを覚える必要は皆無なのだが、やっぱりそれはそれ。
主従関係ではないけれど、
父の代から長年お世話になってきた家の(しかも夫妻の不在時に)台所を平然と仕えるほど、佐助は恩知らずでもの剛胆でもないわけで。
幸村が許しても佐助の良心が許さない。
というか、許せない。
そのなんとも微妙な怒りは、結局のところ、一番の身近に向く。
つまり一番の罪人で、最も天然で無自覚な幸村に八つ当たりし終えたのがさっき。
だいだい、旦那はいっつも唐突なんだよ、
疾きこと風の如く・・?
思った事は即行動。
師に似たのか、似せようとしているのか。
どちらにしても、毎度巻き添えを食らう自分としては迷惑この上ない教えだ。
大将も旦那に甘いからなぁ~
そんな事を考えながら、手は休まず順調に動かす。
食洗器にみっちりと並べてスタートボタンをぽちりと押す。
ウィーンッという音と共に動き出す銀色の箱を確認した後、後ろを向いた。
一瞬の驚き、直後におとずれた呆れに我ながら情けない声が出てしまった。
「・・・・・何してるの、旦那ぁ~」
「え!?」
え!?、じゃないでしょーがっ!
つうか、それこっちの台詞だから!
泡立てたクリームを幸村の目と鼻の先に置いていた自分が悪かったのか。
ホイップクリームをすくい上げた指を口に加えたまま、
ものの見事に幸村は固まっていた。
ご丁寧に頬にまでクリームが付いている。
ボールの横には、いつの間に抱いたのか、学校帰りに買ってきたイチゴまで出していた。
何歳児だよ、あんたはっ
「つまみ食いはすんなってあれほど言ったでしょーが!!」
「す、すまぬっ!!」
「謝るくらいなら最初からするな!ほら、早く手を洗ってきて!」
「うっ、・・はい。」
洗面所に駆け込む後ろ姿を見ながら脱力した。
あいっかわらず返事だけはいいよなー
違う事を思いながら、それでも動いてしまう体はどうしようもない。
てきぱきと幸村が散らしたクリームを拭く。
イチゴも、よく見ると数が減っている。
気にせず、イチゴをすでに冷めていたケーキに盛りつけていく、幸村の分を若干少なめに。
ついでにもう、クリームも適当に塗ってしまう。
・・・幸村がこれを楽しみにしていたから。
お仕置きおしおき、じゃないとつけ上がるからなー
などなど、いろいろ心中で呟きながらも、ケーキは完成した。
余ったイチゴにクリームをヘラでつける。
窓から入る傾きかけの太陽の光の下、
てらてらと赤く輝くイチゴに白はおそろしく映えていた。
手の中の甘い芳香の果実に唇が弧を描くのを止められない。
ぽいっ、と口に放り込む。
想像に違わぬ味に目を細めた。
「早く来なよ、旦那。うまく、できたんだから。」
呟いて、ふと思った。
旦那に甘いのは、大将だけじゃなかった、と。