Eternita
日々の愚痴・妄想小話駄々漏れの場所。 内容はさしてないです....
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戦国バサラ
幸村→←にょ佐助。
思い合っていて一番近くにいるけど、絶対に重なる事のない二人て感じで。
切ない系です。
もう一度だけ、と望んだ。
それが叶うと、もっともっと。と手を伸ばした。
「今日は曇りか」
「そうだねぇ」
「うおっ」
突如、軒下に現れた己が忍に驚いておかしな声を出してしまった。
むぅ佐助はなぜこうも唐突に姿を見せるのか。
某の元に来るのなら、「今から行きますよー」とか「天井にいるからね」とか、何か前置きしてくれればよいものを。
だが、口に出すのは我慢した。
依然そのことを鎌之助に言ったところ、数秒間固まったあげく「幸村様、ご存じとは思いますが我等は忍にございますれば」と言われ、どういう意味かと聞く前に、立ち去ってしまったのだ。
あれはいかに打たれ強い某といえど、少し傷ついたぞ鎌之助。
声に出せない手前、心の中で訴えてみる。
「佐助」
「んー?」
佐助はこれまたどこから出したのか、さきほどまで持っていなかったはずの湯飲みを片手に、庭を見ている。
一応、主筋を目の前にして、明らかに生返事だ。
しかし佐助のこのような反応など、いつものことだ。
この忍は、某の甘味の食べ過ぎや女人に対しての不器用はうるさいほど嘆くわりに、それ以外の事となると、とんと大人しくのほほんとしている。
もちろんそこに、戦場での働きは含まれないが。
「佐助、」
「何ー」
「こっちを見ぬか」
無視されているようで、なんだか悲しい。
真田忍軍の長は、その言葉でようやく某を見、覗き込んでにいっと笑った。
「何、旦那。放っておかれて寂しかったの?」
「なっ、違う!!」
「あはは、旦那は正直だねぇ」
「違うと言うておるっ!!」
佐助は笑い続ける。
うぬぬっ、なんと失礼なやつだ。
某は決して、さ、寂しかったわけではない。ただ、ほんの砂塵の一粒ほど悲しかっただけだ。
「違わないよ、旦那」
某の顔を覗き込み、佐助はゆったりと言う。
柔らかな、かつて某が弁丸と呼ばれておった時の、某を見る表情だ。
某が、お館様のともに戦に赴き、それ以来影を潜めていた顔だった。
「さすけ……」
半ば恍惚と名を呼ばう某に、佐助は笑みを続ける。
そして、とうに佐助を越えた身長の、その頭のてっぺんに手のひらを乗せ、某の髪を梳き出した。
「寂しいんだよ、旦那は。
だって、戦から帰っても待っていてくれる、旦那の唯一がいないから」
佐助はゆるく笑いながら、しかしどこか寂寥を帯びている。
その表情になぜだか胸が締め付けられた。
「おやかた様がいらっしゃる」
「大将は一緒に戦いに出て、一緒に帰ってくるじゃない」
そういうのは違う、違うのだ、と佐助は呟く。
とても小さな声にも関わらず、佐助の声はいつもとてもよく、某の耳に届くのだ。
「佐助がいる、真田隊が、忍軍がおるであろう」
「旦那、だからね……」
佐助は、寂しそうだった。それ以上に悲しそうだった。
嫌だ、と思う。
佐助にはかつてのように笑っていてほしいのだ、誰よりも、某の前で。
「佐助がおる。某にはお前がいる」
それでいい、それで十分なのだ、そう伝えたかった。
けれど、佐助はますます辛そうにわずかに口の端を歪めただけだった。
頭を撫でる腕は止まらない、口も弧を描いている。
それなのに。
やはり、佐助はもう昔のように笑んではくれぬのだ。
その事実が苦しくて辛くて、佐助が憎くてなぜ変わってしまったのか分からなくて、泣きたくなる。
こんなはずではなかった。
大きくなれば、強くなれば、佐助を守れると幼き日に思った。
某のために昼夜働く忍に少しでも長く、少しでも多く、笑って笑って、そして某の側にいてほしかった、それだけだったのに。
「佐助」
「なあに、幸村様」
佐助は目を細めて、口元を歪めて、母のように乳母のように笑んでいた。
ああ、と落胆する。
この忍は某の全てを受け入れ、その胸にしまい込む。
だが、違う。
某が佐助に望むものと、佐助のそれは、同じようでいて決定的に違うのだ。
その事実に、某はようやく思い至った。
「なあ、佐助。俺はな、佐助がいれば良いのだ」
言葉を放った瞬間、目の前の忍が息を詰めた事に気づき、しかし止めることなどできなかった。
「分かるか、佐助。俺はな、お前にいてほしいのだ」
お前さえ、某とともに在れば他はいらぬ。
そう、伝えたかった。
だが言いつなぐことができなかった。
佐助の顔がくしゃりと歪む、その表情に某の方が泣きたくなった。
それが叶うと、もっともっと。と手を伸ばした。
「今日は曇りか」
「そうだねぇ」
「うおっ」
突如、軒下に現れた己が忍に驚いておかしな声を出してしまった。
むぅ佐助はなぜこうも唐突に姿を見せるのか。
某の元に来るのなら、「今から行きますよー」とか「天井にいるからね」とか、何か前置きしてくれればよいものを。
だが、口に出すのは我慢した。
依然そのことを鎌之助に言ったところ、数秒間固まったあげく「幸村様、ご存じとは思いますが我等は忍にございますれば」と言われ、どういう意味かと聞く前に、立ち去ってしまったのだ。
あれはいかに打たれ強い某といえど、少し傷ついたぞ鎌之助。
声に出せない手前、心の中で訴えてみる。
「佐助」
「んー?」
佐助はこれまたどこから出したのか、さきほどまで持っていなかったはずの湯飲みを片手に、庭を見ている。
一応、主筋を目の前にして、明らかに生返事だ。
しかし佐助のこのような反応など、いつものことだ。
この忍は、某の甘味の食べ過ぎや女人に対しての不器用はうるさいほど嘆くわりに、それ以外の事となると、とんと大人しくのほほんとしている。
もちろんそこに、戦場での働きは含まれないが。
「佐助、」
「何ー」
「こっちを見ぬか」
無視されているようで、なんだか悲しい。
真田忍軍の長は、その言葉でようやく某を見、覗き込んでにいっと笑った。
「何、旦那。放っておかれて寂しかったの?」
「なっ、違う!!」
「あはは、旦那は正直だねぇ」
「違うと言うておるっ!!」
佐助は笑い続ける。
うぬぬっ、なんと失礼なやつだ。
某は決して、さ、寂しかったわけではない。ただ、ほんの砂塵の一粒ほど悲しかっただけだ。
「違わないよ、旦那」
某の顔を覗き込み、佐助はゆったりと言う。
柔らかな、かつて某が弁丸と呼ばれておった時の、某を見る表情だ。
某が、お館様のともに戦に赴き、それ以来影を潜めていた顔だった。
「さすけ……」
半ば恍惚と名を呼ばう某に、佐助は笑みを続ける。
そして、とうに佐助を越えた身長の、その頭のてっぺんに手のひらを乗せ、某の髪を梳き出した。
「寂しいんだよ、旦那は。
だって、戦から帰っても待っていてくれる、旦那の唯一がいないから」
佐助はゆるく笑いながら、しかしどこか寂寥を帯びている。
その表情になぜだか胸が締め付けられた。
「おやかた様がいらっしゃる」
「大将は一緒に戦いに出て、一緒に帰ってくるじゃない」
そういうのは違う、違うのだ、と佐助は呟く。
とても小さな声にも関わらず、佐助の声はいつもとてもよく、某の耳に届くのだ。
「佐助がいる、真田隊が、忍軍がおるであろう」
「旦那、だからね……」
佐助は、寂しそうだった。それ以上に悲しそうだった。
嫌だ、と思う。
佐助にはかつてのように笑っていてほしいのだ、誰よりも、某の前で。
「佐助がおる。某にはお前がいる」
それでいい、それで十分なのだ、そう伝えたかった。
けれど、佐助はますます辛そうにわずかに口の端を歪めただけだった。
頭を撫でる腕は止まらない、口も弧を描いている。
それなのに。
やはり、佐助はもう昔のように笑んではくれぬのだ。
その事実が苦しくて辛くて、佐助が憎くてなぜ変わってしまったのか分からなくて、泣きたくなる。
こんなはずではなかった。
大きくなれば、強くなれば、佐助を守れると幼き日に思った。
某のために昼夜働く忍に少しでも長く、少しでも多く、笑って笑って、そして某の側にいてほしかった、それだけだったのに。
「佐助」
「なあに、幸村様」
佐助は目を細めて、口元を歪めて、母のように乳母のように笑んでいた。
ああ、と落胆する。
この忍は某の全てを受け入れ、その胸にしまい込む。
だが、違う。
某が佐助に望むものと、佐助のそれは、同じようでいて決定的に違うのだ。
その事実に、某はようやく思い至った。
「なあ、佐助。俺はな、佐助がいれば良いのだ」
言葉を放った瞬間、目の前の忍が息を詰めた事に気づき、しかし止めることなどできなかった。
「分かるか、佐助。俺はな、お前にいてほしいのだ」
お前さえ、某とともに在れば他はいらぬ。
そう、伝えたかった。
だが言いつなぐことができなかった。
佐助の顔がくしゃりと歪む、その表情に某の方が泣きたくなった。
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