Eternita
日々の愚痴・妄想小話駄々漏れの場所。 内容はさしてないです....
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彩雲国物語
楸瑛+絳攸、現代学園もの。
見ることも叶わない、遥か昔日に語られた哀しいお伽話
他人事だとわらった、他人事だと願った…
「何を読んでいるんだい?」
「うわぁ!!」
ひょっこり背後から現れた藍色に、現在位置を忘れて叫んでしまった。
思った通り、そこにいたのは憎々しいほど爽やかな顔をしたクラスメイト。
「酷いな絳攸、傷つくじゃないか。」
「何がだっ、というかどこがだ!!毎度毎度気配を消して近づきやがって!!」
周りの視線が否応なく突き刺さる。
あからさまに迷惑そうな顔から同情漂う顔まで、いろいろだが。
思わず手近にあったシャープペンを楸瑛に向けて投げ、席を立つ。
俺同様、周囲の視線を浴びながら平然と、意に介さず堂々と笑顔を作っている長年の腐れ縁男をにらみ据えると、胸ぐらを掴みそのまま図書館をでた。
今度こそ、今度こそ本気で灸を据えてやる!
毎度失敗するその望みを、今回も意気込みながら。
「いやだなぁ、君が集中しすぎているだけだよ。」
草が茫々と生い茂る図書館裏で、ようやく足を止めた。
振り返ると楸瑛はにっこりと笑ってさきほどの問答の返しを言った。
「黙れっ、五月蝿いっこの万年常春頭男っ!!」
腹立つ腹立つ腹立つ!!!
なんで毎回毎回こいつはこうなんだっ、ええっ!
「そんなに簡単に切れるのは良くないよ、絳攸。」
諭すような口調、やわらかい声。
これでにやにや笑ってなきゃ言うこと無いんだが、
……って騙されるな、こいつは最悪最低の女誑しなんだ。
きっ、と睨みつける。
計算されたように優美な眉が、これまた計算され尽くした速度と角度ですっと下がった。
こいつの表情が演技でなかったことなんて、あるんだろうか。
いかにも、傷ついてます、と主張する顔を見て、眉間に力がゆく。
今、深い縦皺が出来ていることだろう。
「そんな恐い顔で睨まないでおくれ、本気で傷つくから。」
「ふん、貴様がこれくらいで傷つくような柔な神経をしているとは思えんっ。」
「それは偏見だよ。」
「ぐっ…」
その台詞を言われたのは、久しぶりだ。
中学の時、会って初めの頃はけっこう言われていた言葉だった。
「と、とりあえず、・・用件は何だっ。」
強引に話題を変える。
真っ正面からこいつの正論を打破するには、頭に血が上りすぎた。
「何を読んでいるのかな、と思ってね。」
「・・・・・それだけか。」
脱力する。
そんなもの、ちょっと表紙を見ればわかるだろうがっ。
「表紙が見えなかったんだよ、古い本みたいだったし。」
「俺の思考を先走りして言うなっ!!」
「ごめんよ。で、何を読んでいたの?」
「・・・・・ギリシア神話。」
できれば言いたくなかった。
というか、是非とも黙秘を続けたかった。
「どこら辺?」
「・・・・・」
じとっと、これ以上は言うつもりが無いことを訴える。
睨みが効いたのか、楸瑛がやれやれという風に溜め息を吐いた。
「君にしては、珍しいね。」
「悪かったな。」
案の定、出てきたのは予想した返答。
珍しいって、そんな事自分が一番よく分かっている。
読んでいた箇所を言ったって、楸瑛には何の問題もないのかも知れない。
けれど、俺が、その場面を読んでいる事。
それだけで今の俺の心情を簡単に察するだろうこいつには、言いたくない。
「お前は、・・・・図書館に何の用があったんだ?」
「ん?私は面白い本でも入荷したかな、と思ってね。」
ああ、そういえば今日だったか。
すっかり忘れていた。
「もう見たのか?」
「ざっとはね、続き物の続編とか・・・図鑑が多かったかな、今回は。」
「図鑑、か。」
「なんだい?また、食べられる雑草や虫の研究?」
目が点になった気がする。
なんでこいつそれを・・・・!
「・・・誰が、そんなものするかぁっ!!!」
「半年くらい前、熱心に調べていたじゃないか。」
嘘だろ・・・、
すぱーっんとはりせんで頭を叩かれたような衝撃がした。
湧き上がってくるのが、怒りよりも脱力という時点で、全てにおいて負けている気がした。
「そんなに気にする事かい?」
気にするわっ!!
ひとが、それはもう死に物狂いで隠し通そうとしていた事をさらりと言いやがって!
そう叫びだしてしまいたかった。
無駄に高すぎる矜持が踏ん張らせたけれど・・・。
じーっと視線を感じた。
送り先は解っていたので、最大級の睨みで返してやる。
楸瑛は俺が湧きに抱えている本を見ていた。
「・・・なんだよ。」
「いや、・・・私も久々に読み直してみようかな。」
「これを?」
思わず、まじまじと楸瑛を見る。
「うん。・・・・・・何だい?」
「いや・・お前も、大概似合わないだろう。」
「そうかな?君ほどじゃあないよ。」
速攻で返ってきた言葉の毒に詰まる。
しかも笑顔のおまけ付きだと、余計に。
「私は、英雄には興味がないからね。
麗しい女神や、怪物となり果てた女性達の本来の美しさに思いを馳せるよ。」
「・・・・・・・・・」
こいつ言い切りやがった。
楸瑛らしいといえば、まさにこの男の全てを体現している台詞だと思う。
「・・・常春頭が、」
「ははは、・・さて、行こうか。」
「はっ?」
「借りに行くのを付き合っておくれ。」
「・・・なんで俺が、」
「冷たい事を言わずに。さあ、行こう。」
がっちりと捕まれた腕をひかれる。
力ではこいつに遠く及ばない。
いつも通り、にこにこ、と気味の悪い笑みをまき散らしている楸瑛に、黙ってついていく。
「・・ああ、そうだ絳攸。君のそれも後で貸してね。」
「・・・・・・・・・」
かってに借りろ!!
とは、また言えなかった。
「俺が、読み終わった後ならな。」
楸瑛の歩みはいやにゆっくりで、少し歩きにくい。
「じゃあ、いっそのこと一緒に読もうか。」
「はあっ!?」
何でそうなるっ!!?
何が、じゃあ、だっ!
意味が分からん!
「その方が効率がいいだろう?」
にやり、取り巻きの女達には絶対見せた事のない笑みだ。
益体もない、阿呆な事で頭の沸いている時の顔。
「っんなわけあるかっ!!」
「おや?・・じゃあ、私が古代の女性に焦がれても、妬かないでおくれよ?」
「・・・・っ!!」
焼く?約?・・妬く!?
俺が、たかだかお話の登場人物に?・・ヘラみたいに?
冗談じゃない。
「ある、わけないだろう。そんな、こと・・、」
ぼんやりとわざと焦点をぼやけさせながら答える。
さきほどから微塵も表情を変えずにいる楸瑛を視界に入れたくなかった。
「ならいいけれどね。」
ああ、でも・・
「私が心の底から恋うのは君だけだからね?」
「・・・・・・は?」
無理矢理顔を覗き込まれる。
目の前に楸瑛の形のいい鼻があった。
「・・んにを言ってるんだっ!!この万年発情男ぉ!!!」
「ははは、ほら着いたよ。・・絳攸。図書館の前では静かにね。」
「くそっ・・」
楸瑛といると、まるで自分が聞き分けのない子どもみたいに思える。
わがままを言って、混乱させるのはこいつなのに・・
その事実に苛ついて地団駄を踏みたくなる。
「失礼します。」
俺の悪態なんて気にもせず、図書館扉を開けた楸瑛の後に続く。
こいつ自身は気づいてもいない。
周囲の羨望も不満も憤りも、全てさらりと流してしまう。
本当に・・・
「やってられない・・」
「ん?何か言った?」
「知るかっ」
そう言って、繋がれたままの手のひらに視線を落とした。
憧れだけを持って、憎しみも妬みも抱かない者がいたなら・・
そんな人間になりたかった。
不可能だと諭してくれる、俺も同じだと暗示する。
この物語が嫌いだった。
他人事だとわらった、他人事だと願った…
「何を読んでいるんだい?」
「うわぁ!!」
ひょっこり背後から現れた藍色に、現在位置を忘れて叫んでしまった。
思った通り、そこにいたのは憎々しいほど爽やかな顔をしたクラスメイト。
「酷いな絳攸、傷つくじゃないか。」
「何がだっ、というかどこがだ!!毎度毎度気配を消して近づきやがって!!」
周りの視線が否応なく突き刺さる。
あからさまに迷惑そうな顔から同情漂う顔まで、いろいろだが。
思わず手近にあったシャープペンを楸瑛に向けて投げ、席を立つ。
俺同様、周囲の視線を浴びながら平然と、意に介さず堂々と笑顔を作っている長年の腐れ縁男をにらみ据えると、胸ぐらを掴みそのまま図書館をでた。
今度こそ、今度こそ本気で灸を据えてやる!
毎度失敗するその望みを、今回も意気込みながら。
「いやだなぁ、君が集中しすぎているだけだよ。」
草が茫々と生い茂る図書館裏で、ようやく足を止めた。
振り返ると楸瑛はにっこりと笑ってさきほどの問答の返しを言った。
「黙れっ、五月蝿いっこの万年常春頭男っ!!」
腹立つ腹立つ腹立つ!!!
なんで毎回毎回こいつはこうなんだっ、ええっ!
「そんなに簡単に切れるのは良くないよ、絳攸。」
諭すような口調、やわらかい声。
これでにやにや笑ってなきゃ言うこと無いんだが、
……って騙されるな、こいつは最悪最低の女誑しなんだ。
きっ、と睨みつける。
計算されたように優美な眉が、これまた計算され尽くした速度と角度ですっと下がった。
こいつの表情が演技でなかったことなんて、あるんだろうか。
いかにも、傷ついてます、と主張する顔を見て、眉間に力がゆく。
今、深い縦皺が出来ていることだろう。
「そんな恐い顔で睨まないでおくれ、本気で傷つくから。」
「ふん、貴様がこれくらいで傷つくような柔な神経をしているとは思えんっ。」
「それは偏見だよ。」
「ぐっ…」
その台詞を言われたのは、久しぶりだ。
中学の時、会って初めの頃はけっこう言われていた言葉だった。
「と、とりあえず、・・用件は何だっ。」
強引に話題を変える。
真っ正面からこいつの正論を打破するには、頭に血が上りすぎた。
「何を読んでいるのかな、と思ってね。」
「・・・・・それだけか。」
脱力する。
そんなもの、ちょっと表紙を見ればわかるだろうがっ。
「表紙が見えなかったんだよ、古い本みたいだったし。」
「俺の思考を先走りして言うなっ!!」
「ごめんよ。で、何を読んでいたの?」
「・・・・・ギリシア神話。」
できれば言いたくなかった。
というか、是非とも黙秘を続けたかった。
「どこら辺?」
「・・・・・」
じとっと、これ以上は言うつもりが無いことを訴える。
睨みが効いたのか、楸瑛がやれやれという風に溜め息を吐いた。
「君にしては、珍しいね。」
「悪かったな。」
案の定、出てきたのは予想した返答。
珍しいって、そんな事自分が一番よく分かっている。
読んでいた箇所を言ったって、楸瑛には何の問題もないのかも知れない。
けれど、俺が、その場面を読んでいる事。
それだけで今の俺の心情を簡単に察するだろうこいつには、言いたくない。
「お前は、・・・・図書館に何の用があったんだ?」
「ん?私は面白い本でも入荷したかな、と思ってね。」
ああ、そういえば今日だったか。
すっかり忘れていた。
「もう見たのか?」
「ざっとはね、続き物の続編とか・・・図鑑が多かったかな、今回は。」
「図鑑、か。」
「なんだい?また、食べられる雑草や虫の研究?」
目が点になった気がする。
なんでこいつそれを・・・・!
「・・・誰が、そんなものするかぁっ!!!」
「半年くらい前、熱心に調べていたじゃないか。」
嘘だろ・・・、
すぱーっんとはりせんで頭を叩かれたような衝撃がした。
湧き上がってくるのが、怒りよりも脱力という時点で、全てにおいて負けている気がした。
「そんなに気にする事かい?」
気にするわっ!!
ひとが、それはもう死に物狂いで隠し通そうとしていた事をさらりと言いやがって!
そう叫びだしてしまいたかった。
無駄に高すぎる矜持が踏ん張らせたけれど・・・。
じーっと視線を感じた。
送り先は解っていたので、最大級の睨みで返してやる。
楸瑛は俺が湧きに抱えている本を見ていた。
「・・・なんだよ。」
「いや、・・・私も久々に読み直してみようかな。」
「これを?」
思わず、まじまじと楸瑛を見る。
「うん。・・・・・・何だい?」
「いや・・お前も、大概似合わないだろう。」
「そうかな?君ほどじゃあないよ。」
速攻で返ってきた言葉の毒に詰まる。
しかも笑顔のおまけ付きだと、余計に。
「私は、英雄には興味がないからね。
麗しい女神や、怪物となり果てた女性達の本来の美しさに思いを馳せるよ。」
「・・・・・・・・・」
こいつ言い切りやがった。
楸瑛らしいといえば、まさにこの男の全てを体現している台詞だと思う。
「・・・常春頭が、」
「ははは、・・さて、行こうか。」
「はっ?」
「借りに行くのを付き合っておくれ。」
「・・・なんで俺が、」
「冷たい事を言わずに。さあ、行こう。」
がっちりと捕まれた腕をひかれる。
力ではこいつに遠く及ばない。
いつも通り、にこにこ、と気味の悪い笑みをまき散らしている楸瑛に、黙ってついていく。
「・・ああ、そうだ絳攸。君のそれも後で貸してね。」
「・・・・・・・・・」
かってに借りろ!!
とは、また言えなかった。
「俺が、読み終わった後ならな。」
楸瑛の歩みはいやにゆっくりで、少し歩きにくい。
「じゃあ、いっそのこと一緒に読もうか。」
「はあっ!?」
何でそうなるっ!!?
何が、じゃあ、だっ!
意味が分からん!
「その方が効率がいいだろう?」
にやり、取り巻きの女達には絶対見せた事のない笑みだ。
益体もない、阿呆な事で頭の沸いている時の顔。
「っんなわけあるかっ!!」
「おや?・・じゃあ、私が古代の女性に焦がれても、妬かないでおくれよ?」
「・・・・っ!!」
焼く?約?・・妬く!?
俺が、たかだかお話の登場人物に?・・ヘラみたいに?
冗談じゃない。
「ある、わけないだろう。そんな、こと・・、」
ぼんやりとわざと焦点をぼやけさせながら答える。
さきほどから微塵も表情を変えずにいる楸瑛を視界に入れたくなかった。
「ならいいけれどね。」
ああ、でも・・
「私が心の底から恋うのは君だけだからね?」
「・・・・・・は?」
無理矢理顔を覗き込まれる。
目の前に楸瑛の形のいい鼻があった。
「・・んにを言ってるんだっ!!この万年発情男ぉ!!!」
「ははは、ほら着いたよ。・・絳攸。図書館の前では静かにね。」
「くそっ・・」
楸瑛といると、まるで自分が聞き分けのない子どもみたいに思える。
わがままを言って、混乱させるのはこいつなのに・・
その事実に苛ついて地団駄を踏みたくなる。
「失礼します。」
俺の悪態なんて気にもせず、図書館扉を開けた楸瑛の後に続く。
こいつ自身は気づいてもいない。
周囲の羨望も不満も憤りも、全てさらりと流してしまう。
本当に・・・
「やってられない・・」
「ん?何か言った?」
「知るかっ」
そう言って、繋がれたままの手のひらに視線を落とした。
憧れだけを持って、憎しみも妬みも抱かない者がいたなら・・
そんな人間になりたかった。
不可能だと諭してくれる、俺も同じだと暗示する。
この物語が嫌いだった。
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